商品マニュアルから公的文書までオンライン上のみならず、多くの場所で利用されている「PDFデータ」。
今ではMicrosoftのOfficeを始めとする様々なページ制作アプリケーションにPDFデータ書き出し機能が搭載され、電子文書のデファクトスタンダードとなっています。
この記事では、インデザインでのPDF書き出しについて、印刷用PDFデータを中心に画像付きでわかりやすく解説いたします。
InDesignでのPDF書き出しの設定
InDesignで作成したデータのPDF書き出しは、手順さえ覚えてしまえば簡単に行うことができます。しかしドキュメントの設定を間違えると、書き出しの際に確認作業が増えたり、ときには作り直しになったりと必要以上の手間やトラブルの原因になります。
ドキュメントはPDFに書き出した後の使用に合わせて設定
PDFデータの書き出しを行うには、先ず元となるドキュメントを作成する必要があります。
新規で書類を作る際は、商業用印刷に使用するためのデータなのか、それともオンライン上でのアンケート用の書類を作るためなのか等、仕上がり後の使用法方に合わせた設定でドキュメントを作り始めることが大切です。
カラー設定の確認で書き出し後のトラブル防止
PDF書き出しの際のトラブル防止のため、カラーの設定も重要です。
Illustratorなどではカラーモードで書類の全体のカラーを切り替えることができますが、InDesignではこうした機能はありません。
RGBでつくられたドキュメントを印刷用のCMYKでPDF書き出しを行うと色味が変わってしまうことがあります。
カラーモードに迷ったらCMYKモードで
「メインはオンライン上での使用だが、印刷やプリンターなどで出力することもあるけどカラーモードはどちらにしたらいいの?」と迷ったときは「CMYK」に設定することをおすすめします。
RGBとCMYKでは、RGBのほうが特に鮮やかな色に対して表現できる色が多いため、RGBで作ったデータをCMYKに変換すると色がくすんでしまう傾向にあります。
その逆でも色味が変わってしまうことがありますが、RGB環境の多くではパソコンのモニターであったりスマホの画面であったりと表示される環境が大きく違うので、問題になりにくい傾向にあります。こうしたことから、迷ったらCMYKに設定しておくと問題が起きにくくなります。
InDesignでPDFに書き出しする手順
InDesignでPDFを書き出す手順はそれほど難しくありません。しかし書き出し設定の画面を開くと、多くの専門的な用語が並ぶパレットにどうしたら良いか迷います。
ほとんどの場合、PDFデータの使用用途に合わせた設定を選ぶことで、ベストな項目が自動で選択されます。しかし商業印刷などを行う際、印刷会社によって推奨設定が異なる場合もあり設定の変更が必要になります。
PDF書き出しプリセットで出力先に適したPDFデータに変換
InDesignでPDF書き出しを行うには、先ず「ファイル」→「PDF書き出しプリセット」から出力先に適したプリセットを選択します。
InDesignに用意されているプリセットは、書き出した後のデータの印刷方式や閲覧される媒体など、PDFデータの使用環境に合わせた基本設定がされています。
メール校正やオンラインでの配布などは、データサイズを小さくできる「最小ファイルサイズ」自宅や会社などのプリンター綺麗に印刷したい場合は「高品質印刷」など、データの使われ方によりプリセットを選択します。
「PDF/X-1a:2001 (日本)」から「プレス品質」までは、商業印刷で使用されることが多い設定です。
どのプリセットを選択するかは、印刷を依頼する印刷会社により異なるため、各会社毎の入稿ガイドなどを確認する必要があります。
それぞれのプリセットの定義については「ファイル」→「PDF書き出しプリセット」→「定義」で確認することができます。
プリセット設定変更で環境に合わせた高品質なPDFデータを
InDesignで設定されているPDF書き出しプリセットで、問題なくPDFの書き出しは行えますが、特に商業印刷向けに書き出しを行う場合は出力環境に合わせ設定を変える必要があります。
特によくある設定内容は
①一般
単ページにするのか、又は見開きページで書き出しするのか等を設定します。
②トンボと裁ち落とし
PDFデータを「トンボ」付きのデータにしたり、また表示させるトンボの指定やページの塗り足しの設置を行います。
これらの設定の他、各項目ごとに設定は可能です。出力先により独自のルールを定めているところもあるため「入稿ガイド」等をよく確認し各項目の設定を行うことになります。
InDesignではセキュリティ付きのPDF書き出しも可能
InDesignでは、書き出すPDFデータにセキュリティをかけることもできます。
「Adobe PDF書き出し」パネルの「セキュリティ」をクリックします。
権限の「文書の印刷および編集とセキュリティ設定にパスワードが必要」の前にあるチェックボックスにチェックを入れると各項目が設定できるようになります。
校正用データ等で変更を加えられたくないときなど、データに制限を設ける事ができます。
インタラクティブPDFの書き出しは書き出しメニューで
InDesignのPDF書き出しでは、印刷向け以外に動画や音声、チェックボックスやフォーム等のインタラクティブな機能を含んだPDFの書き出しもできます。
チェックボックスやフォームを配置したドキュメントを開いた状態で「ファイル」→「書き出し」を選択します。
パネルのプルダウンメニューから「Adobe PDF(インタラクティブ)」を選択し保存をクリックするだけで、インタラクティブPDFを書き出すことができます。
PDFへ書き出しする前に!入稿前チェックリスト
せっかく作ったドキュメントも、データに不備があると色味が変わってしまったり、文字化けしたり、きちんと印刷されずトラブルに繋がってしまいます。
PDFデータは異なる環境でも書類を共有できることを優先させているため、PDFデータそのものを加工や修正するには限度があります。入稿後にデータの不備がみつかった場合、再度元のアプリケーションでデータの修正を行った後、PDFの書き出しをしなければなりません。
埋め込み不明なフォントはアウトラインが安全
InDesignでPDF書き出しを行うと、ドキュメント上で使用されているフォントは基本的にPDFに埋め込まれます。しかしPDFに埋め込むことができないフォントを使用していると、出力先で別のフォントに変わってしまう可能性があります。また、場合によっては受付を断られることもあります。
特に外部に印刷を依頼するためのデータ等に使用するフォントは、確実に埋め込めるものを使用するか、埋め込みに不安があるフォントは、全てアウトライン化しておく必要があります。
画像の解像度とカラーモードのチェック
PDF書き出しをすると、基本的に画像も全て埋め込まれます。画像については他のソフトウェアで制作する場合と同じように、解像度とカラーモードに注意が必要です。
編集用のモニターはRGBでの表示のため、データがCMYKになっていなくても気付きにくいものです。画像の解像度に関してもモニター上では問題なく表示されていてもデータサイズが足りないといった事があります。しっかりと元データを確認しておきましょう。
プリフライト機能でリアルタイムにエラー確認
InDesignには入稿時のエラーをチェックするための「プリフライト」という機能があります。この機能を使うことで入稿前のドキュメントのチェックを行うことができます。
先ず「ウィンドウ」→「出力」→「プリフライト」を選択します。
プロファイルメニューから、今回テスト用に作った「テスト001」というプロファイルを選択します。
「エラー」の下にドキュメント内のエラーオブジェクトが表示されます。
エラーになったオブジェクトをクリックすると、下のボックス内にエラーの内容が表示されます。エラーの内容を確認し修正を行います。
InDesignでPDFに書き出ししよう!
Adobe InDesignはPDFデータととても相性の良いソフトウェアです。商業印刷用のデータだけでなく、オンライン配布用の電子書類や、自費出版用の電子BOOKなど、PDF書き出し機能を使っていろいろなPDFデータを作ることができます。
記事では、商業印刷向けのPDFデータの書き出しを中心に解説いたしましたが、今回の内容を参考にして、いろいろな形式のPDF書き出しにも挑戦してみてください。