最近は、業務用以外でもLOG(ログ)収録の機能を備えたカメラが増えており、映像編集時、カラー調整にLUTを使用することも少なくありません。
LUTを使用したカラー調整の流れ
LUTとは、「Look Up Table」の略語で、ある値の答えが必ず1つの値となる場合、あらかじめ答えを計算しておき、配列(表、テーブル)にしておくことで、その配列を参照することで毎回計算することなく効率的に処理を行う手法です。
値を入力すると対応した値に変換し、出力値を返してくれるという、色に関する配列表のようなものです。「ラット」や「エル・ユー・ティー」などと呼ばれます。
参照:TVlogic LUT基礎講座
http://ismini.tvlogic.tv/jp/technology/lutindex.html
これまでLumetriで一つ一つパラメーターを調節してきたカラー調整も、LUTを適用すればあっというまに映像全体で統一した色の調整が可能です。
次の項目で、撮影〜編集の過程で、LUTを使用したカラー調整の流れを紹介します。
LUTを使用したカラー調整の流れ①LOG収録
LUTは、LOG収録した映像を編集する際には欠かせません。
LOG収録は、写真でいうとRAW撮影のようなものです。撮影時は色が浅く収録されますが、色の情報がたくさん詰まっています。
Sony S-log3
C0060 – Sony A7S II – Slog3 Footage straight from Card
これまでの撮影と違い、より広い「色域」「ダイナミックレンジ」「階調」の映像情報を記録することができ、通常の撮影では白飛びしてしまう逆光シーンも、色の情報を失うことなく記録することができます。
PANASONIC V-log
PANASONIC LUMIX GH5 C4K Ungraded 4:2:2 10 Bits V-log 150mbs “Constance Flowers”
ただ、LOG収録の難点は、浅い色の状態で撮影するので、撮影時にはどんな色になるかわからないことです。実際には、外部モニターでLUT適用後の色味を確認しながら撮影することになります。
LUTを使用したカラー調整の流れ②LUTを適用して基本補正
撮影後、編集ソフトを使用し、LUTを適用します。
一番初めに行う基本補正は、手動で調整を行うか、撮影したカメラに適したLUTを選びます。
Premiere Proの場合には、Lumetriの項目にあらかじめ8つのLUTが表示されているので、この中からカメラの特性に適したLUTを適用します。
もし、撮影したカメラに適したLUTがない場合は、メーカーサイトからダウンロードすることができます。
LUTを使用したカラー調整の流れ③LOOKを適用してグレーディング
Premiere ProのLumetriでは、クリエイティブの項目で「LOOK」というプルダウンメニューがあります。LOOKもLUTの一種ですが、LUTが基本補正であるのに対して、LOOKはさらに世界観を演出するカラーグレーディングの役割があります。
LOGで撮影→基本補正(LUTの適用)→カラーグレーディング(LOOKの適用)というのがLOG収録でのカラー調整の流れです。
LUTを追加する方法①LUTを探しダウンロードする
Premiere ProのLumetriには、前述したようにあらかじめ8つのLUTが表示されていますが、それ以外に外部からダウンロードしたLUTを適用することができます。
LUTのダウンロード①|メーカーのHPからダウンロード
撮影したカメラに適したLUTをメーカーのHPからダウンロードします。
代表的なメーカーのサイトを紹介しておきます。
・ソニー
S-Log用
https://www.sony.jp/support/ichigan/enjoy/movie/s-log/grading.html
・パナソニック
V-Log用
https://av.jpn.support.panasonic.com/support/dsc/download/lut/index.html
キャノン
Canon lookup table 201911版
LUTのダウンロード②|ファイルを解凍
ダウンロードしたZIPファイルを解凍します。
「.cube」という拡張子のファイルを使用します。
LUTを追加する方法②Premiere Pro内に読み込む
Premiere Pro内に読み込み①|Lumetriパネルから適用
表示されていないLUTをPremiere Proを開いている状態で読み込む方法です。
PremiereのLumetriパネルを表示させます。
ワークスペースを「カラー」にしておくと、カラー調整に適したパネルレイアウトになるので便利です。
クリップをタイムラインに配置し、その上に調整レイヤーを作成します。
クリップに直接適用するのではなく、調整レイヤーに適用することで、適用前と適用後を比べることもでき、不要な場合は削除することも簡単にできるのでおすすめです。
Lumetri/基本補正から、「カスタム」もしくは「参照」をクリックします。
ダウンロードしたLUTを選択すると、調整レイヤーに適用されます。
Premiere Pro内に読み込み②|Lumetriのドロップダウンリストに追加
次に、LumetriのドロップダウンリストにLUTを追加する方法を紹介します。
あらかじめリストに追加しておけば、適用したい時にPC内をブラウズすることなく、いつでも選択できるので便利です。
まずはアプリケーションの中身を確認します。
Premiere Proのアイコンを右クリックし、「パッケージの内容を表示」させます。
Contents/Lumetri/LUTsを表示させます。
Lumetriのドロップダウンリストに追加するには、CreativeフォルダにはLOOK用のLUTを、Technicalフォルダには基本補正用のLUTを入れます。
Premiere Proを再起動させ、Lumetriパネルを表示させてみましょう。
さきほどそれぞれのフォルダに入れたLUTがドロップダウンリストに表示されているはずです。
LUTをPremiere Pro内に読み込み③|Legacy内のLUTを追加
パッケージの中身には、「Creative」「Technical」の他に、「Legacy」というフォルダがあります。この中にはPremiere Proに読み込まれていないLUTがたくさん入っています。
適用させる方法は、①の方法でその都度「参照」から適用させるか、②の方法で気に入ったLUTはドロップダウンリストに表示されるように設定しておくと便利です。
LUTs/LegacyにあるLUTは、基本補正用のLUTです。
演出用のLUTはすぐ上にあるLOOK/Legacyフォルダ内にあります。
適用させる方法は基本補正の時と同じです。
Premiereで使えるおすすめの無料LUT6選
公開されている無料・有料LUTはたくさんありますが、無料で利用できるサイトを紹介します。基本補正の後、LOOKとして使用しましょう。
おすすめの無料LUT5選①|Ground Control
おすすめの無料LUT5選②|fresh LUTs
おすすめの無料LUT5選③|COLOR GRADING CENTRAL
https://www.colorgradingcentral.com/free-luts/
おすすめの無料LUT5選④|ROCKETSTOCK
おすすめの無料LUT5選⑤|Premium Beat
おすすめの無料LUT5選⑥|FIX the PHOTO
https://fixthephoto.com/ja/lut-%E7%84%A1%E6%96%99-free-luts
他にも映画用カメラなどを制作しているドイツのARRI社のLUTジェネレーターなどもカメラのプロファイルに合わせて簡単にLUTをダウンロードでき、今やLUTは専門家だけが扱うものではなく、一般にも広く公開されるものになっています。
https://www.arri.com/en/learn-help/learn-help-camera-system/tools/lut-generator
Adobe Premiere ProでLUTを使ってみよう!
Premiere ProにLUTを追加する方法を紹介しました。
LUTはパラメーターを一つ一つ調整せずに、ワンクリックで色の基本補正が可能です。
基本補正の後はLOOKでさらに世界観を演出することができます。ぜひ、トライしてみてください。